最近の家づくりでは
「UA値0.4以下」「断熱等級6」といった住宅性能の数字を目にする機会が増えてきました。
住宅会社を比較するときにも、
UA値を判断材料にされる方が増えているように感じます。
もちろん、断熱性能を数字で比較できるようになったことは、とても良いことです。
ただ、ここで少し気をつけたいことがあります。
UA値が良い家と、実際に夏涼しく冬暖かい家は、必ずしも同じではありません。
家づくりに携わって二十数年。現場監督から始まり、
設計やアフターメンテナンスまで経験してきましたが、
住宅の快適性は一つの数字だけでは判断できないと考えています。
今回は、高気密高断熱住宅を検討するときに、
UA値以外に何を確認すればよいのかを整理してみたいと思います。

UA値とは「外皮平均熱貫流率」のことで、
住宅の屋根・天井・外壁・床・窓などから、どれくらい熱が逃げやすいかを表した数値です。
数値が小さいほど、住宅全体の外皮を通して熱が逃げにくいことを意味します。
例えば、UA値0.6の住宅と0.4の住宅を比較した場合、
同じ条件であれば0.4の住宅のほうが断熱性能は高いと評価できます。
ただし、UA値はあくまで建物の外皮性能を表す指標です。
窓から入る日射熱や、隙間から出入りする空気、実際の施工状態などをすべて評価しているわけではありません。
UA値は重要ですが、住宅の快適性を評価するための指標の一つにすぎないのです。
UA値が良くても、建物に隙間が多ければ、そこから空気が出入りします。
冬場には冷たい外気が侵入したり、暖房した空気が外へ逃げたりする原因になります。
この隙間の程度を表すのが「C値(相当隙間面積)」です。
UA値が主に計算によって求められるのに対し、C値は実際の建物で気密測定を行うことで確認できます。
設計上の性能だけでなく、施工した住宅がどの程度の気密性を確保できているのか。
これは住宅会社を選ぶうえで確認しておきたいポイントです。
高断熱住宅で意外と重要なのが、太陽との付き合い方です。
冬は南側の窓から太陽の熱を取り込むことで、暖房負荷を減らすことができます。
一方、夏はその日射が室内に入りすぎると、冷房負荷が増えてしまいます。
つまり、同じUA値の住宅でも、
窓の向きや大きさ、庇や外付けシェードの計画によって、室内環境は変わってきます。
特に神戸や阪神間では、敷地の向きや隣家との距離、
周囲の建物による日陰など、敷地ごとの条件も考える必要があります。
断熱性能を高めることと、太陽の熱を上手に利用・遮蔽することはセットで考えたいものです。
高気密高断熱住宅は、
断熱材を厚くして高性能な窓を採用すれば完成するわけではありません。
室内の空気をどのように入れ替え、暖房や冷房の空気をどのように行き渡らせるのかも重要です。
例えば、冬場にリビングは暖かくても、
脱衣室や廊下が寒い家では、家全体が快適とはいえません。
また、夏場は温度だけでなく湿度の管理も大切になります。
換気設備の種類だけでなく、必要な換気量を確保できる計画になっているか、
空調設備とどう組み合わせるかまで確認したいところです。
最後は、完成すると見えなくなる部分です。
どれだけ高性能な断熱材を採用しても、
施工時に隙間ができたり、断熱層が途切れたりすれば、本来の性能を十分に発揮できない可能性があります。
また、断熱材の種類や配置によっては、防湿層や通気層の計画も重要になります。
特に屋根や壁の内部では、湿気がどこから入り、どこへ抜けるのかを考えなければなりません。
現場監督から家づくりを経験してきた立場として、
断熱材の厚みやカタログ性能だけでなく、どのように施工し、どのように確認しているかを大切にしたいと考えています。
例えば、次のような2つの住宅があったとします。
UA値だけを見ればA住宅のほうが高性能です。
しかし、実際の室内環境や冷暖房エネルギーまで含めると、
必ずしもA住宅が優れているとは限りません。
もちろん、これはB住宅のほうが必ず快適という意味でもありません。
住宅の方位、窓の性能、間取り、空調の使い方など、条件によって結果は変わります。
だからこそ、数字だけを比較するのではなく、その数字を実際の暮らしにどうつなげているのかを確認することが大切です。
高気密高断熱住宅を検討されている方には、
UA値とあわせて次のような質問をしてみることをおすすめします。
UA値は建物ごとに計算していますか?
気密測定は実施していますか?実測値は確認できますか?
夏の日射遮蔽と冬の日射取得はどのように計画していますか?
冷暖房設備の配置や家全体の温度差はどのように検討していますか?
断熱材の施工状況や気密処理はどのように確認していますか?
壁や屋根の内部結露について、どのような対策をしていますか?
すべての住宅会社が同じ方法を採用する必要はありません。
大切なのは、なぜその設計や施工方法を選んでいるのか、きちんと説明してもらえることです。
住宅性能の数値は、以前と比べてずいぶん分かりやすくなりました。
住宅会社を客観的に比較するためにも、UA値や断熱等級は大切な指標です。
ただ、家づくりの目的は数値を競うことではありません。
夏も冬も快適で、冷暖房費を抑えながら、長く安心して暮らせること。
そして、その性能が完成後もきちんと維持されることだと思います。
UA値は家づくりのゴールではなく、良い家をつくるための判断材料の一つ。
これから高気密高断熱住宅を検討される方には、
ぜひ数字の先にある設計や施工品質まで目を向けていただきたいと思います。
家づくりを考える際の参考になれば幸いです。