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2026.10.24リフォーム・リノベーション

介護リフォームで後悔しないために|母の介護で気づいた「善意の提案」の落とし穴

 

 

 

 

数年前、母が体調を崩したことをきっかけに、

病院や介護施設など、いろいろなところを回る機会がありました。

 

 

 

 

それまで介護の世界については、

建築の仕事を通じて一定の知識があるつもりでした。

 

 

 

 

介護施設の種類や建築基準、

バリアフリー設計、住宅改修で注意するべきことなど、一通り勉強してきたつもりです。

 

 

 

 

しかし、知識として知っていることと、

実際に家族として介護に向き合うことは、まったく違うものでした。

今回は、その経験から感じた介護リフォームの難しさについて書いてみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

介護が必要になると、家族には考える余裕がない

 

 

 

家族が突然体調を崩し、これまでの生活が難しくなる。

病院とのやり取り、介護認定、施設探し、今後の生活のことなど、

短期間で決めなければならないことが次々と出てきます。

 

 

 

そんな状況で、自宅の改修まで考えることになるわけです。

 

 

 

「ここに手すりを付けたほうがいい」

 

 

「段差をなくしたほうが安全」

 

 

「お風呂も改修しておいたほうがいい」

 

 

信頼するケアマネジャーさんからそう提案されれば、家族としては安心して任せたくなります。

 

 

 

 

実際、私自身も母のことで、

いろいろな提案を受ける立場になりました。

普段は建築の仕事をしている私でさえ、

家族の介護という状況になると、冷静に判断することの難しさを感じました。

 

 

 

 

まして建築の知識がない方なら、なおさらではないでしょうか。

 

 

 

 

介護の専門家と建築の専門家では、見ているものが違う

 

 

 

 

介護リフォームで難しいと感じたのは、

専門家によって判断する視点が違うことです。

介護に携わる方は、利用者の身体状況や日常生活の安全性を中心に考えます。

 

 

 

これは当然のことで、非常に大切な視点です。

 

 

 

一方、建築の専門家は、それに加えて建物の構造や設備、

使い勝手、将来の変更、工事費用なども考えます。

 

 

 

例えば、手すりを設置する場合。

 

 

 

介護の視点では、身体を支えるために必要な場所や高さを考えます。

建築の視点では、そこに十分な下地があるのか、

確実に固定できるのか、扉の開閉や動線を妨げないか、といったことも確認します。

 

 

 

 

また、車椅子での生活を想定して大きく改修しても、

実際の身体状況や介助方法によっては、そこまでの工事が必要ない場合もあります。

逆に、今は必要なくても、将来を考えて準備しておいたほうがよい部分もあります。

介護として正しい提案と、建築工事として最適な提案は、必ずしも一致しないのです。

 

 

 

 

 

補助金があるから工事をする、という順番になっていないか

 

 

 

 

介護リフォームには、

介護保険による住宅改修費の支給をはじめ、自治体独自の助成制度などがあります。

こうした制度は、介護が必要な方やご家族にとって非常にありがたいものです。

 

 

 

 

ただ、気を付けたいことがあります。

 

 

 

それは、「補助金が使えるから、この工事もしておきましょう」という考え方が先行していないかということです。

 

 

 

 

本来は、生活の中で何に困っているのかを整理し、

必要な改修を考えたうえで、利用できる制度を確認するのが自然な順番だと思います。

ところが、介護の現場では、ケアマネジャーや福祉用具の事業者などを通じて、住宅改修の話が進むことがあります。

 

 

 

 

付き合いのある施工業者へ依頼し、

その中で計画から工事まで進んでいくケースもあるでしょう。

 

 

 

 

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。

 

 

 

 

ただ、建物全体を見た専門的な検討が十分に行われないまま、工事内容が決まってしまう可能性はあります。

実際、介護リフォームに関する話を聞く中でも、後になって過剰だった、別の方法でもよかったという話を耳にすることがありました。

そして母の介護を通じて、私自身も提案を受ける側として、同じような問題を考える機会がありました。

補助金はありがたい制度ですが、使えることと、必要な工事であることは別の話です。

 

 

 

 

 

一番難しいのは、善意から生まれる提案

 

 

 

 

今回の経験で、特に難しいと感じたのがこの部分です。

介護に携わる方々は、利用者のことを考え、

少しでも安全に生活できるようにと提案してくださいます。

その多くは、良かれと思っての善意から生まれるものだと思います。

 

 

 

 

だからこそ、難しい。

 

 

 

 

明らかに不要な工事を売り込まれているのであれば、断ることもできます。

しかし、親身になって考えてくれている人から「安全のために必要です」と言われれば、家族としてはなかなか疑問を挟めません。

 

 

 

 

特に介護が始まったばかりの余裕のない時期であれば、なおさらです。

ただ、善意の提案であっても、

建築的な検討が不足していれば、結果として無駄な工事につながる可能性があります。

誰かが悪いという単純な話ではありません。

 

 

 

 

 

それぞれの専門家が、自分の専門分野から良いと思うことを提案している。

だからこそ、全体を見て判断する人が必要なのだと思います。

 

 

 

 

 

介護リフォームを決める前に確認してほしいこと

 

 

 

 

介護リフォームを考える際には、次のような点を確認してみてください。

 

 

 
今の身体状況で、本当に必要な工事なのか
 
福祉用具の利用など、工事以外の方法で対応できないか
 
身体状況が変化したときにも使いやすいか
 
建物の構造や設備に問題が生じないか
 
補助金の対象になることだけで工事を決めていないか
 
複数の方法を比較したか
 

 

 

 

例えば、段差の解消ひとつをとっても、

床全体を改修する方法もあれば、部分的なスロープなどで対応できる場合もあります。

 

 

 

 

どちらが良いかは、建物の状況や利用する方の身体状況によって変わります。

 

 

 

 

また、介護保険の住宅改修は原則として工事前の申請が必要で、対象工事や支給条件にも決まりがあります。

工事を急ぐ場合でも、担当のケアマネジャーや自治体に制度を確認しながら、

可能であれば建築の専門家にも相談してほしいと思います。

 

 

 

 

建築のプロだからこそ、感じたこと

 

 

 

 

現場監督から始まり、設計やアフターメンテナンスまで経験してきましたが、

今回の母の介護では、建築の知識だけでは分からないことがたくさんありました。

介護する側の大変さ、時間的な余裕のなさ、専門家の言葉を頼りにしたくなる気持ち。

実際にその立場になって初めて分かったことも少なくありません。

 

 

 

 

一方で、建築の専門家として見ると、

もう少し違う方法があるのではないかと感じることもありました。

介護リフォームは、単に手すりを付けたり段差をなくしたりする工事ではありません。

 

 

 

その人が、これからどのように暮らしていくのか。

介護する家族にとっても、無理のない住まいになっているのか。

そして、必要以上のお金をかけずに、安全で使いやすい環境をつくれるのか。

そうしたことを総合的に考える必要があります。

 

 

 

介護の専門家と建築の専門家、そしてご本人とご家族。

それぞれの視点を持ち寄って考えることが、より良い介護リフォームにつながるのではないでしょうか。

 

 

 

 

これからご家族の介護に向き合う方には、ぜひ知っておいていただきたいことです。

急いでいるときほど、工事を決める前に一度立ち止まって、本当に必要な改修なのかを確認してほしい。

母の介護を経験して、建築に携わる者として改めて感じたことです。

 

 

 

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