先日、住宅業界にとってなかなかインパクトのあるニュースが入ってきました。
大和ハウス工業が、新築一戸建て住宅事業を大きく再編し、
全国23道県から撤退して、東京・大阪などの都市圏へ経営資源を集中するというものです。
報道によると、撤退する地域では注文住宅の営業を2026年9月末まで、
分譲住宅については2027年3月末までとし、2027年4月から新しい体制へ移行するとのことです。
さらに気になったのが、
設計自由度の高い注文住宅について、
販売価格を5000万円以上に絞り込むという報道です。
長く住宅業界にいる人間として、
これは単に「大手ハウスメーカー1社の経営戦略」というだけではないように感じました。
家づくりの仕事に携わって早二十数年。
現場監督からスタートしたキャリアも、
営業・設計・アフターメンテナンス、そして工務店経営まで経験してきました。
それでも住宅業界はどんどん変化していて、今でも毎日が勉強です。
より良い家づくりを実現するために、
こうした業界の動きにも目を向けながら日々学び続けています。
ご興味のある方は、ぜひ過去のブログもさかのぼって読んでいただけるとうれしいです。

今回の再編の背景として挙げられているのが、
資材価格と人件費の上昇です。
これは私たち地域工務店もまったく同じです。
木材だけでなく、断熱材、サッシ、住宅設備、電気設備など、
家を構成するさまざまなものの価格が以前とは大きく変わりました。
さらに職人不足も深刻です。
住宅は工場だけでは完成しません。
最後は現場で、大工さん、電気屋さん、水道屋さん、左官屋さんなど、
多くの職人さんが施工して初めて完成します。
材料価格と人件費が上がれば、
当然ながら住宅価格にも影響します。
大手ハウスメーカーであっても、
この問題から逃れることはできないということなのでしょう。
今回、私が特に気になったのは23道県から撤退するという部分です。
これまで大手ハウスメーカーの強みの一つは、
全国に営業所や展示場を展開し、幅広い地域で住宅を供給できることでした。
しかし人口減少が進み、
新築住宅の着工戸数も長期的には減少していくことが予想されています。
そこへ建築費の上昇が重なっています。
そうなると、全国に営業・設計・施工体制を維持するよりも、
住宅需要の見込める都市圏へ集中したほうが経営として合理的だという判断になるのだと思います。
大和ハウスの2026年3月期の国内住宅販売戸数は4,867戸と報じられています。
それほどの規模を持つ会社でも、
国内の戸建て住宅事業を再構築する。
住宅業界そのものが、
大きな転換点に来ていることを象徴するニュースではないでしょうか。
私たちが仕事をしている兵庫県についても気になるところです。
現時点で確認できる報道では撤退する23道県のすべてが明らかになっているわけではありませんが、
大和ハウスは現在も兵庫県内で住宅事業を展開しています。
実際、西宮市などでは現在も分譲住宅が販売されています。
また今回の再編は「東京や大阪など都市圏へ集中する」という方針です。
その意味では、神戸・阪神間を含む兵庫県南部は、
大手ハウスメーカーにとって今後も重要な市場になる可能性が高いでしょう。
つまり兵庫県では、
「大手が撤退して競争がなくなる」
というより、
需要のある都市部では、むしろ各社が経営資源を集中させる可能性がある
と考えたほうがよさそうです。
住宅価格が上がれば、
当然ながら家を建てられる人の数は減っていきます。
だからといって、
単純に性能や材料を落として安くすればいいとも思いません。
断熱性能や耐震性能を削った結果、
光熱費が増えたり、快適性が下がったり、
将来大きな修繕費が必要になったりすれば、本当に安い家だったのか分からなくなります。
大切なのは、建築時の金額だけを見るのではなく、
まで含めて考えることだと思います。
私たちのような地域工務店にとっても、
これは他人事ではありません。
大手とは規模も経営方法も違いますが、
資材高、人件費、職人不足、人口減少という環境は同じです。
だからこそ、「何でもできます」ではなく、
自分たちはどんな家を、なぜつくるのかを明確にすることが、
これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。
もう一つ気になるのが、
住宅会社が地域から撤退した後のことです。
家は30年、40年、それ以上使っていくものです。
建てた会社の営業拠点がなくなったとしても
家そのものはその場所に残り続けます。
点検、設備交換、外壁や屋根の修繕、
家族構成が変わったときのリフォームなど、
完成してから住宅会社との付き合いが必要になる場面はたくさんあります。
だから家づくりでは、
価格や性能、デザインだけでなく、
「建てた後、この家を誰が見てくれるのか」まで考えて住宅会社を選ぶことも大切だと思っています。
今回の大和ハウスのニュースは、
大手と地域工務店のどちらが良いという単純な話ではありません。
住宅市場が縮小していく中で、
大手には大手の戦い方があり、地域工務店には地域工務店の役割があります。
私たちは神戸を中心に家づくりをしている会社だからこそ、
建てた家を長く見続けられる存在でありたい。
10年、20年、30年後に振り返ったとき、
「やっぱり、この家でよかった」
と思っていただける家づくりとは何なのか。
住宅業界が大きく変わろうとしている今だからこそ、改めて考えていきたいと思います。