現在、打合せ中のお客様宅で、
Matter(マター)規格に対応した家づくりを検討しています。
照明やエアコン、カーテン、玄関ドアなどをスマートフォンや音声で操作する「スマートホーム」は、
以前からありました。ただ、メーカーごとにアプリや通信方式が異なり、機器同士をうまく連携できないことが課題でした。
その壁を越えるためにつくられた共通規格がMatterです。
家づくりの仕事に携わって早二十数年。
現場監督から始まり、
営業・設計・アフターメンテナンス、
工務店経営まで経験してきましたが、
住宅設備と通信技術の関係は、
これからますます深くなっていきそうです。
今でも毎日が勉強です。
より良い家づくりを実現するために、
新しい技術についても「本当に暮らしに役立つのか」という視点で学び続けています。

Matterは、照明やセンサー、スマートロック、家電などを、
メーカーやプラットフォームの違いを越えて連携させるための共通規格です。
Apple Home、Google Home、Amazon Alexaなど、
異なるスマートホーム環境で同じ対応機器を使いやすくすることを目指しています。
たとえば、あるメーカーの照明をAppleの機器で操作し、
家族はGoogleの環境から操作するといった使い方が考えられます。
ひとつのメーカーのサービスだけに依存しにくくなることは、
長く住み続ける住宅にとって大きな利点です。
2026年現在、Matterはバージョン1.6まで進み、
照明やコンセント、センサー、空調、カーテン類に加え、カメラ、ドアベル、太陽光発電、蓄電池、給湯器、EV充電など、
住宅との関係が深い分野へ対象が広がっています。
ただし、規格上対応していても、
実際に販売されている製品や、各アプリで使える機能は同じとは限りません。
「Matter対応」と書かれていれば、すべての機能が自由に連携できるわけではない点には注意が必要です。
スマートホームというと、最新の機器選びに目が向きがちです。
しかし、新築時に本当に考えておきたいのは、機器そのものよりも、将来交換できるようにするための下準備です。
MatterはWi-Fi、Ethernet、ThreadといったIPベースの通信を利用します。
特にThread対応機器を使う場合は、
Threadボーダールーターという中継機能を持つ機器が必要です。
対応するスマートスピーカーやホームハブなどに内蔵されている場合もあります。
住宅側では、次のような点を検討しておく必要があります。
ルーターや通信機器を置く場所
各階のWi-Fiアクセスポイント
必要箇所への有線LAN配線
通信機器用のコンセント
分電盤や情報分電盤の将来余力
機器を交換しやすい点検性
高気密高断熱住宅では、金属を使った断熱材や建物形状、
階数などが通信環境に影響する場合もあります。
完成後にWi-Fiが届かないと分かってから配線を追加するのは大変です。
間取りと同じように、通信環境も設計段階で考えておくことが大切です。
スマートスイッチや電動カーテン、センサーなどは、製品によって必要な電源や配線が異なります。
スイッチボックスの大きさや奥行き、
電源線、中性線、空配管、カーテンボックス付近のコンセントなどを、
採用予定機器に合わせて確認しなければいけません。
ただし、将来どの製品が主流になるかを完全に予測することはできません。
だからこそ、特定の製品に住宅全体を合わせ込むより、
電源・配線・空配管・交換スペースに余裕を持たせることが、結果として長く使える家につながります。
今回のお客様との打合せでも、
Matter対応機器だけですべてを統一するのではなく、
既存の赤外線リモコン対応機器なども組み合わせる方向で検討しています。
日本では、エアコンをはじめ赤外線リモコンで操作する設備が多く、
すべてをMatter対応製品に置き換えるのは、現時点では現実的でない場合もあります。
Matter対応機器、メーカー独自のシステム、
赤外線リモコンを連携させるスマートリモコン。
これらを適材適所で使い分けるほうが、選択肢を広く持てます。
大切なのは、最新規格を採用すること自体ではありません。
普通のスイッチでも操作できる
インターネット障害時にも最低限使える
機器が故障しても交換できる
家族全員が無理なく操作できる
特定メーカーのサービス終了に備えられる
こうした「スマート機能がなくても住宅として困らない計画」を基本にしたうえで、
便利な機能を追加していくのがよいと考えています。
スマートホームの技術は、今後も更新されていきます。
今選んだ機器を30年間そのまま使うというより、
住宅の配線や通信環境を土台として、
機器を交換しながら暮らしに合わせて育てていくものになりそうです。
Matterによってメーカー間の壁が低くなれば、
照明や空調、防犯、太陽光発電、蓄電池、EVなどを連携させ、
エネルギーをより効率よく使える可能性も広がります。
一方で、新しい技術だからこそ、
規格上できることと、実際の製品でできることを分けて確認しなければいけません。
住宅はスマートフォンよりも、はるかに長く使うものです。
最新設備をたくさん入れることより、将来の変化を受け止められる家にしておくこと。
Matter対応の家づくりを検討しながら、
改めてその大切さを感じています。
これから家づくりを考える方にとって、
通信や配線計画を考えるきっかけになれば幸いです。