子育て世帯の家づくりで、
長く人気が続いているのが「リビング階段」です。
玄関から自分の部屋へ直接上がるのではなく、LDKを通って2階へ上がる。
「子どもが帰ってきたことが分かる」
「出かけるときにも顔を合わせやすい」
そんな理由から、
子育てにはリビング階段がいいと考える方も多いと思います。
ただ、実際の暮らしを考えると、
リビング階段にもメリットだけではありません。
家づくりの仕事に携わって早二十数年。
現場監督からスタートしたキャリアも、
営業・設計・アフターメンテナンス・工務店経営まで。
より良い家づくりを実現するために、日々学び続けています。
今回は「子育てと間取り」という視点から、リビング階段について考えてみます。

少し前までの住宅では、
玄関近くの廊下に階段があり、
そのまま2階へ上がれる間取りも一般的でした。
この間取りだと、子どもが学校から帰ってきて、そのまま自分の部屋へ。
親がキッチンやリビングにいると、
帰ってきたことに気づかないこともあります。
その点、リビング階段なら、
というメリットがあります。
特に子どもが小さいうちは、
家族の気配を感じられる間取りとして魅力があります。
だからこそ、子育て世帯の家づくりでは長く人気が続いているのだと思います。
一方で、リビング階段の暮らしを考えていると、別の面も見えてきます。
玄関からLDKに入り、そこから階段を上がるということは、
学校や外出先から持ち帰った荷物が、一度LDKへ入ってくるということです。
ランドセルやカバン、上着、帽子。
買ってきたものや趣味の道具なども、
とりあえずリビングやダイニングに置いてしまいやすい。
そのまま自分の部屋へ持って上がればいいのですが、
これがなかなか難しいものです。
「あとで持って上がろう」が積み重なって、
ダイニングの椅子やソファ、リビングの一角が荷物置き場になることもあります。
リビング階段は家族との接点をつくりやすい反面、
家族それぞれの私物と共有スペースとの境界が曖昧になりやすい間取りとも言えます。
では、子育てにはリビング階段と廊下階段のどちらがいいのか。
私は、階段の位置だけで正解を決める必要はないと思っています。
大切なのは、帰宅してから自分の部屋までの動線をどうつくるかです。
例えばリビング階段を採用するなら、
こうした収納計画まで一緒に考えることで、
リビング階段のデメリットはかなり変わります。
逆に廊下階段でも、
家族が自然に顔を合わせられる工夫はできます。
階段だけを切り取って「子育てにはこちら」と決めるのではなく、
玄関、収納、LDK、洗面、子ども部屋までを一つの生活動線として見ることが大切です。
もう一つ考えておきたいのが、子どもの成長です。
家を建てたときには小学生だった子どもも、
10年後には高校生や大学生になっているかもしれません。
小さい頃はいつも家族と一緒に過ごしていても、
成長すれば一人で過ごす時間も増えていきます。
友達を家に呼ぶこともあるでしょう。
そのとき、必ずリビングの真ん中を通らなければ自室へ行けないことが、家族にとって良いのかどうか。
これは家庭によって考え方が違います。
家族のコミュニケーションを間取りだけで解決しようとするのではなく、
適度な距離感やプライバシーも含めて考えておくことが大切です。
子育て世帯の間取りを考えると、
どうしても「今の暮らし」が中心になります。
もちろん今の生活は大切です。
ただ、住宅は子育てが終わってからも長く使います。
リビング階段にするか、廊下階段にするか。
どちらにもメリット・デメリットがあり、それだけで良い家、悪い家が決まるものではありません。
私なら階段の位置だけではなく、
「帰ってきたら、どこで靴を脱ぎ、上着を脱ぎ、カバンを置き、手を洗い、どこで過ごし、どこから自分の部屋へ行くのか」
まで順番に考えます。
間取り図の上で人を歩かせてみるようなイメージです。
そして、5年後、10年後に子どもが成長した姿も想像してみる。
子育てしやすい家とは、
単に子どもの様子が見える家ではなく、家族それぞれが自然に片付けられ、
ほどよく顔を合わせ、成長に合わせて距離感も変えていける家なのではないでしょうか。
これから間取りを考える方は、
「リビング階段にするか」だけでなく、その前後の生活動線まで一緒に考えてみてください。