今月から、戸建て住宅のフルリノベーション工事がスタートしました。
リノベーション工事でいつも興味深いのが、
解体して初めて分かることがたくさんあるということです。
図面だけでは分からなかった構造や、
過去に手を入れた跡など、壁や天井をめくってみて初めて見えてくるものがあります。
今回も解体を進めていくと、
壁の中から昔ながらの「土壁」が出てきました。
家づくりの仕事に携わって早二十数年。
現場監督からスタートしたキャリアも、
営業・設計・アフターメンテナンス・工務店経営まで経験してきました。
それでも、こうして古い建物を解体してみると新しく気づくことがあります。今でも毎日が勉強です。
より良い家づくりを実現するために、日々学び続けていますので、
ご興味のある方はぜひ過去のブログもさかのぼって読んでいただけるとうれしいです。

土壁は、竹などで組んだ下地に土を塗り重ねてつくられる、昔ながらの壁です。
今の住宅では石膏ボードを下地としてクロスや塗り壁で仕上げる方法が一般的なので、
新築で土壁を見る機会はかなり少なくなりました。
しかし古い木造住宅をリノベーションしていると、
解体した壁の中からこうした土壁が出てくることがあります。
今回の現場でも、まさにそんな状況でした。
全部壊して新しくしてしまえば工事としては分かりやすいのですが、
古いものだからといって、すべて撤去するのが正解とは限りません。
状態を確認しながら、使えるものはできるだけ活かせないかと考えています。
土壁の特徴のひとつが調湿性です。
室内の湿度が高いときには水分を吸収し、
乾燥すると放出する性質があります。
もちろん、土壁があるだけで家全体の湿度管理ができるというものではありません。
現在の住宅では断熱・気密・換気などを含めて建物全体で考える必要がありますが、
自然素材そのものが持っている性質としては、とても面白い材料です。
さらに土は燃えにくい材料です。
昔の家づくりで土壁が使われてきた背景には、
身近で手に入る材料だったことに加えて、防火・耐火という面での利点もありました。
現代の建築基準や防火性能は、
壁の構成全体で判断する必要があるため「土壁があるから耐火性能が確保できる」と単純には言えません。
それでも、調湿性があり、燃えにくく、長い年月を経ても残っている素材というのは、改めて考えてみるとなかなか優秀です。
フルリノベーションというと、
古いものをすべて撤去して、新築のようにつくり直すイメージがあるかもしれません。
もちろん、耐震性や断熱性に問題がある部分はきちんと改善する必要があります。
特に古い住宅では、現在の暮らしに合わせて断熱・耐震・設備などを大きく見直すことも重要です。
一方で、残せるものまで全部捨ててしまう必要はないとも思っています。
昔の建物には、今ではあまり使われなくなった材料や工法が残っています。
土壁もそのひとつ。
今回の現場では、既存の土壁の状態や新しい断熱計画、
構造との取り合いなどを確認しながら、できるだけ利用できる形で工事を進めていきたいと考えています。
リノベーションの面白さでもあり、難しさでもあるのがここです。
古い家をそのまま残すだけでは、
現在求められる断熱性や耐震性、快適性を満たせないことがあります。
逆に、性能だけを追いかけてすべて新品に交換すると、
その家が長い年月をかけて持ってきた良さまで失ってしまうことがあります。
残すもの、直すもの、新しくするものを見極める。
これは実際に建物を見ながら考えなければできない、
リノベーションならではの仕事だと思います。
今回出てきた土壁も、単に「古い壁」として見るのではなく、
その特性を理解したうえで、新しくつくる断熱層や仕上げとの相性を考えていきます。
解体工事はまだ始まったばかりです。
これからさらに建物の中身が見えてくると、新しい発見も出てくると思います。
古い家が持っている良さを活かしながら、これから先も快適に、安心して住み続けられる家にしていく。
そんなリノベーションの過程も、またブログで紹介していきたいと思います。