住宅展示場やマンションのモデルルームを見に行くと、
「やっぱりプロがつくった空間は素敵だな」
と感じることがあります。
もちろん、内装材や照明、家具、
インテリアのコーディネートが上手なのも理由のひとつです。
ただ、設計する側から見ていると、それ以前に大きな理由があります。
とにかく、いろいろなものに余裕があるんです。
家づくりの仕事に携わって早二十数年。
現場監督からスタートしたキャリアも、
営業・設計・アフターメンテナンス・工務店経営まで。

モデルルームをよく見てみると、
LDKが広かったり、ソファが大きかったり、
ダイニングテーブルの周囲にも十分なスペースが取られていたりします。
廊下や玄関にもゆとりがあり、
大きな窓や高い天井が採用されていることもあります。
一言でいえば、デカい。
そして、この「大きさ」が空間を素敵に見せるうえでかなり効いています。
家具と家具の間に余白がある。
窓の横にも壁が残っている。
何も置かれていない床や壁がある。
こうした余白があることで、素材や家具、照明がきれいに見えてきます。
これは住宅だけではありません。
ホテルやショップなどでも、
少し高級な空間ほど「何もないところ」を贅沢に使っています。
空間は、物を置いたところだけでなく、
何も置かないところによってもつくられている。
そんなことを感じます。
では、モデルルームと同じようにつくれば素敵な家になるのか。
ここは少し注意が必要です。
例えば30坪前後の土地で家を建てる場合、
建ぺい率や容積率、駐車スペース、隣家との距離など、さまざまな条件があります。
その中で、
「玄関をもっと広く」
「LDKをもっと広く」
「廊下にもゆとりを」
「洗面もホテルのように」
と全部を大きくしていけば、
当然ながら建物も大きくなります。
建物が大きくなれば建築費も増えますし、
土地によっては、そもそもそんな計画ができません。
特に神戸や阪神間のように、
限られた土地を有効に使いながら家を建てる場合、
モデルルームのような「全部に余裕のある設計」は現実的ではないケースも多いと思います。
だから、モデルルームを見るときには、
「素敵だからそのまま真似する」ではなく、
「なぜ素敵に感じるのか」を見ることが大切です。
オーガニックスタジオ兵庫の家づくりでも、余白は大切にしています。
ただし、家全体を大きくするという意味ではありません。
むしろ大切なのは、どこに余白をつくり、どこをコンパクトにするのか。
例えば、家族が長い時間を過ごすリビングには少し余裕を持たせる一方で、廊下はできるだけ少なくする。
玄関そのものを必要以上に大きくしなくても、
視線が庭まで抜けるようにして広く感じさせる。
窓もたくさん付けるのではなく、
外の景色や光の入り方を考えて、効果的な場所につくる。
収納も「とにかく大きく」ではなく、
必要な場所に必要な量をつくる。
面積を増やさなくても、
設計によって余白を感じさせることはできます。
ここは注文住宅を設計する面白さでもあります。
家づくりをしていると、
「LDKは20畳ほしい」
「30坪では狭いでしょうか?」
といった話になることがあります。
もちろん面積は大切ですが、
同じ20畳でも感じ方はかなり違います。
天井の高さ、窓の位置、家具の配置、外への視線、
建具のつくり方、隣の空間とのつながり。
こうしたものによって、
実際の床面積以上に広く感じることもあれば、
逆に面積は十分なのに窮屈に感じることもあります。
だから私たちは、
単純に「何畳あるか」「何坪あるか」だけでは家を考えません。
限られた面積の中で、どこを削って、どこに余裕をつくるのか。
そこに設計の力が出ると思っています。
これから住宅展示場やモデルルームを見る方には、
ぜひ「素敵だった」で終わらず、少しだけ寸法を意識して見てもらいたいと思います。
ここまで見ていくと、
「モデルルームが素敵に見えた理由」が少しずつ分解できるようになります。
そして、その全部を採用する必要はありません。
「この余白は自分たちの暮らしにも欲しい」
「ここまでの広さはいらないけれど、この窓の取り方は好き」
そんなふうに、自分たちの家に必要なものだけを拾っていけばいいと思います。
家は展示するためではなく、
毎日暮らすためのものです。
広ければ広いほどいいわけでも、
小さければ合理的というわけでもありません。
土地、予算、家族構成、暮らし方、
そして将来のメンテナンスまで考えながら、
必要なところにはきちんと余白をつくり、必要以上に大きくしない。
30年後にも「この家でよかった」と思える家は、
そんなバランスの先にあるのではないかと思います。
モデルルームを見る機会があれば、
インテリアだけでなく、ぜひ「余白」にも注目してみてください。