家づくりで「屋根に一番大切な性能は?」と聞かれれば、
多くの方がまず思い浮かべるのは防水ではないでしょうか。
もちろん、それは間違いではありません。
屋根は雨や雪、強い日射にさらされる場所です。
雨水を建物内部へ入れないことは、屋根の基本中の基本です。
ただ、長く家を維持することを考えると、もうひとつ大切な視点があります。
それが、「もし湿気が入ったとしても、どう乾かすか」という考え方です。
家づくりの仕事に携わって早二十数年。
現場監督からスタートしたキャリアも、
営業・設計・アフターメンテナンス・工務店経営まで。
今でも毎日が勉強です。
より良い家づくりを実現するために、日々学び続けています。
ご興味のある方は、ぜひ過去のブログもさかのぼって読んでいただけるとうれしいです。

屋根の防水には、屋根材だけでなく、
その下に施工される「ルーフィング」と呼ばれる防水層が重要な役割を果たしています。
瓦やガルバリウム鋼板などの屋根材と、
その下のルーフィングも防水という考え方です。
当然ながら、この防水層には高い防水性能が求められます。
ただ、ここで少し難しいのが、
「水」と「湿気」は同じようで少し違うということです。
雨水のような液体の水はしっかり止めたい。
一方で、屋根の内部に入り込んだ水蒸気まで完全に閉じ込めてしまうと、
条件によっては内部結露や木材の含水率上昇につながる可能性があります。
だからこそ、屋根は「濡らさない」という発想だけではなく、
「湿気をため込まない」「乾燥できる状態をつくる」という視点も必要になります。
もちろん、最初から雨漏りを許容していいという話ではありません。
雨仕舞いをきちんと考え、施工精度を高めて雨水を入れないことが大前提です。
そのうえで住宅を長い時間軸で考えると、
「水分が絶対に入らない」と言い切るのはなかなか難しいところがあります。
施工中の雨、室内から移動してくる水蒸気、
わずかな隙間から入る湿気など、水分が屋根内部へ入り込む可能性はいくつもあります。
そこで大切になるのが、
「入れない」+「入ったものを逃がす」
という考え方です。
これは屋根だけの話ではありません。
外壁でも床下でも、長く安定した状態を保つためには、
単純に密閉するのではなく、水分がどこから入り、どこへ抜け、どう乾燥するのかを考えることが重要です。
一般的なルーフィングは、高い防水性を持つ一方、水蒸気を通しにくい材料です。
それに対して透湿ルーフィング(透湿防水シート)は、
外からの雨水を防ぎながら、内部側の水蒸気を外へ逃がしやすくすることを目的とした材料です。
考え方としては、外壁に使われる透湿防水シートに近いものがあります。
屋根の下地となる野地板は木材です。
木は多少の水分を含むこと自体が問題なのではなく、
高い含水状態が長く続くことを避けることが大切です。
そのため、防水性能だけでなく「乾燥する方向が確保されているか」を考えることには意味があります。
特に高気密・高断熱住宅では、壁や屋根の構成が昔の住宅より複雑になっています。
断熱材、防湿層、野地板、ルーフィング、屋根材。
それぞれ単体の性能だけを見るのではなく、屋根全体として水蒸気がどのように動くのかを考えなければいけません。
ここは非常に重要なところです。
透湿ルーフィングを採用したからといって、
それだけで屋根の湿気対策が完成するわけではありません。
透湿性能を生かすには、その先に湿気を逃がせる構成が必要です。
例えば、
などを総合的に考える必要があります。
つまり、材料ひとつで結露対策をするのではなく、
屋根全体をひとつのシステムとして考えるということです。
透湿ルーフィングは、そのための選択肢のひとつです。
屋根形状や屋根材、断熱方法によって最適な構成は変わりますので、
「透湿ルーフィングだから必ず良い」と単純化するのも違うと思っています。
屋根は、住宅の中でもかなり過酷な環境にあります。
真夏には強烈な日射を受け、冬には外気で冷やされ、雨や雪にもさらされます。
だからこそ防水性能は絶対に軽視できません。
ただ、防水だけを強くして「とにかく水分を通さない」と考えるだけではなく、
万一湿気が入り込んだときに、どちらへ逃げて、どう乾いていくのかまで考えておきたいところです。
「濡らさない」と「乾かす」。
この両方を設計することが、長く安心して暮らせる家につながるのではないかと思います。
屋根は完成すると、ほとんど見えなくなってしまう部分です。
だからこそ屋根材の色や形だけではなく、
その下がどういう構成になっているのかにも少し目を向けてみてください。
30年後も「この家でよかった」と思える家づくりには、
こうした見えなくなる部分の耐久性が大切だと考えています。
家づくりを考える際の参考になれば幸いです。