今年の夏も、本当に暑いですね。
外に出るだけで体力を奪われますし、
日中の現場では暑さ対策なしでは仕事にならないような日が続きます。
毎年のように「今年は暑い」と言っている気もしますが、ふと気になりました。
実際、30年くらい前と比べて、
夏はどのくらい変わっているのでしょうか?
そこで今回は、気象庁が公表している近畿地方の気温データを見ながら、
「湿度」「湿気」という視点も加えて、これからの家づくりについて考えてみたいと思います。
家づくりの仕事に携わって早二十数年。
現場監督からスタートしたキャリアも、
営業・設計・アフターメンテナンス・工務店経営まで。
今でも毎日が勉強です。
より良い家づくりを実現するために日々学び続けていますので
ご興味のある方は、ぜひ過去のブログもさかのぼって読んでいただけるとうれしいです。

気象庁の観測データを見ると、
近畿地方の気温は年による上下を繰り返しながらも、
長期的には上昇しています。
日本全体で見ても、
夏(6〜8月)の平均気温は長期的に100年あたり1.38℃の割合で上昇しています。
特に近年は高温となる年が目立ちます。
2025年の日本の夏の平均気温は、
1991〜2020年の平均より2.36℃高く、
1898年の統計開始以降で最も暑い夏となりました。
近畿地方でも2025年は、
・6月 平年より+1.8℃
・7月 平年より+2.7℃
・8月 平年より+1.6℃
という高温になっています。
30年前の1990年代にも、
もちろん暑い夏はありました。
ただ、「今年は特別暑いな」と感じていたような高温が、
最近ではそれほど珍しいものではなくなってきています。
家づくりを考えるうえでも、この変化は無視できません。
今建てる住宅は、2050年代にも使われているからです。
夏の暑さを考えるとき、
気温と一緒に考えたいのが「湿度」です。
ここが少しややこしいところです。
「最近は昔より蒸し暑いから、湿度も上がっているのでは?」
そう思われる方も多いかもしれません。
ところが気象庁の長期観測を見ると、
都市部の年平均相対湿度はむしろ低下傾向にあります。
都市化などの影響もあると考えられています。
では、なぜこれほど蒸し暑く感じるのでしょうか?
ここで知っておきたいのが、
「相対湿度」と「実際に空気中に含まれている水蒸気量は同じものではない」
ということです。
天気予報などで、
「今日の湿度は70%です」
と聞きます。
これは一般的に相対湿度のことです。
その温度の空気が含むことのできる最大の水蒸気量に対して、
現在どれくらい水蒸気が含まれているかを割合で示したものです。
一方、住宅の温熱環境を考えるときには、
空気中に実際どれくらい水蒸気が存在するのかを見ることも大切です。
一般向けには、これを「絶対湿度」と考えると分かりやすいと思います。
大切なのは、暖かい空気ほど多くの水蒸気を含むことができるということです。
例えば、おおよその計算では、
30℃・相対湿度60%の空気には、
1㎥あたり約18gの水蒸気が含まれています。
一方、
25℃・相対湿度60%なら、1㎥あたり約14g程度です。
同じ「湿度60%」でも、実際に含まれている水蒸気量は違います。
つまり、気温が高くなれば、
相対湿度が昔と同程度、あるいは多少低かったとしても、
空気中に含まれる水蒸気量が多い状態になることがあります。
これが、夏の蒸し暑さを考えるうえで重要なポイントです。
この話は、そのまま住宅の夏の快適性につながります。
例えば室温が27℃程度まで下がっていても、湿度が70%近くあると、
「エアコンをつけているのに、なんとなくベタベタする」
と感じることがあります。
逆に同じ27℃でも、
湿度が適切に抑えられていると体感はかなり変わります。
湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、
身体から熱を逃がしにくくなるためです。
だから夏の住宅では、
「何℃まで冷やすか」だけではなく、「どこまで湿気を取り除けるか」も大切です。
ここが冬の家づくりとは少し違うところです。
高性能住宅というと、
断熱性能の数字に注目が集まりがちです。
もちろん断熱は非常に重要です。
屋根や壁、
窓から入ってくる外の熱をできるだけ室内へ伝えない。
さらに庇や外付けブラインドなどを使い、
夏の日射を室内へ入れない。
まずは断熱と日射遮蔽によって、
家の中へ入ってくる熱そのものを減らすことが基本です。
ただ、それだけで夏の快適性が決まるわけではありません。
人が生活していれば、
料理、入浴、洗濯物、そして人自身からも水蒸気が発生します。
換気によって高温多湿な外気も入ってきます。
そこで大切になるのがエアコンなどによる冷房と除湿です。
高気密・高断熱住宅だからエアコンがいらないのではなく、
高気密・高断熱だからこそ、小さなエネルギーで温度と湿度をコントロールしやすくする。
こちらのほうが実際の暮らしに近い考え方だと思います。
昔の住宅では、
「夏は窓を開けて風を通す」
という考え方が一般的でした。
もちろん春や秋、夏でも外気温や湿度が低い時間帯なら、
窓を開けるのは気持ちのいいものです。
しかし、外気温が35℃を超え、
空気中に大量の水蒸気を含んでいる真夏の日に窓を開けると、
熱だけでなく湿気も室内へ入れることになります。
現在の夏では、
外から入ってくる熱と湿気を抑えながら、エアコンを上手に使う。
という考え方がより現実的になっています。
「エアコンを使わない家」を目指すのではなく、
少ないエネルギーで無理なく冷房・除湿できる家にする。
断熱、気密、窓、日射遮蔽、換気、空調。
どれか一つだけではなく、建物全体で考える必要があります。
30年前の1990年代と現在を比べると、
夏の気候は確実に変わっています。
そして住宅は、一度建てると30年、40年、それ以上使い続けます。
今から家を建てるということは、
2050年代の夏にもその家で暮らしているということです。
だからこそ現在の建築費だけではなく、
将来の光熱費やエアコンなどの設備更新、
メンテナンスまで含めて考えておく必要があります。
もちろん、住宅性能は高ければ高いほどいい、という単純な話でもありません。
性能を高めるためにはコストも必要です。
その地域の気候に対して、どこまで性能を高め、
どこにお金をかけることが効果的なのか。
そして冬の寒さだけでなく、
これからさらに厳しくなる可能性がある夏をどう快適に暮らすのか。
30年前と夏が変わっているのであれば、
家づくりもそれに合わせて変化していく必要があります。
10年後、20年後、30年後の暑い夏にも、
「この家にしておいてよかった」
そう思ってもらえる家づくりを続けていきたいと思います。