先日、浴室の手すりを追加する工事を行いました。
浴室の手すりというと、
「転倒防止のために付けておけば安心」と思われがちです。
もちろん手すりがあることで安全性は高まります。
ただ、今回の工事でも改めて感じたのが、手すりは単に付いていればいいものではないということです。
使う人の身長や体格、身体の状態、
どんな動作を補助したいのかによって、必要な位置も高さも変わります。
家づくりの仕事に携わって早二十数年。
現場監督から始まり、
営業・設計・アフターメンテナンス、
そして工務店経営まで経験してきましたが、今でも毎日が勉強です。
より良い家づくりを実現するために日々学び続けていますので、
ご興味のある方は過去のブログもさかのぼって読んでいただけるとうれしいです。

浴室は家の中でも転倒に注意したい場所です。
床が濡れて滑りやすいうえに、
といった、身体のバランスを崩しやすい動作が多くあります。
そこで役立つのが手すりです。
ただし、「転ばないため」という漠然とした目的だけで位置を決めるのではなく、
どの動作を助けるための手すりなのかを考えることが大切です。
浴槽をまたぐときに握りたい手すりと、
浴槽の中から立ち上がるときに必要な手すりでは、適した位置や形が違います。
住宅の設計では、一般的な寸法や目安があります。
しかし、人の身体は当然ながら一人ひとり違います。
背の高い人と小柄な人では握りやすい高さが違いますし、
足腰の状態や利き手によっても使いやすい位置は変わります。
さらに年齢を重ねれば、
今まで問題なくできていた「浴槽をまたぐ」「立ち上がる」といった動作が難しくなることもあります。
だからこそ、手すりについては
「この高さが正解」と一律に考えるのではなく、
実際に使う人の動作を確認して決めることが重要です。
場合によっては、縦型が使いやすいのか、
横型がいいのか、L型が適しているのかまで変わってきます。
新築やリノベーションの打ち合わせでも、
「将来必要になるかもしれないので、今のうちに手すりを付けておきたい」という話があります。
考え方としてはよく分かります。
ただ、将来誰がどのような身体の状態で使うのかは分かりません。
今決めた位置が、そのとき本当に使いやすいとは限らないのです。
そこで設計段階では、
手すりそのものをたくさん付けておくことだけでなく、
将来必要な場所へ取り付けられるよう、壁の下地などを考えておくという方法もあります。
必要になったとき、その人に合った場所へ設置できるようにしておく。
これも長く住み続けるための設計のひとつだと思います。
家は完成したときが一番新しくても、
そこで暮らす人は少しずつ変化していきます。
子どもが成長し、家族構成が変わり、自分たちも年齢を重ねていきます。
30年という時間で考えれば、
必要になる設備や使いやすい寸法が変わるのは当然のことです。
だから住宅は、「今ちょうどいい」だけではなく、
必要になったときに無理なく変えられることも大切です。
今回の浴室手すりの交換は小さな工事ですが、
こうした工事をしていると、家を建てた後まで見ていくことの大切さを改めて感じます。
設備を交換したり、手すりを追加したり、傷んだ部分を直したり。
そうやって暮らしの変化に家を合わせながら、住み続けていく。
手すり一つでも、「付ければいい」ではなく、
「誰が、どんなときに、どう使うのか」を考える。
これから新築やリノベーションを考えられる方にも、
将来の住まい方を考える際の参考になれば幸いです。