我々が毎日暮らす家には「耐震性」「耐久性」「温熱性」「気密性」「間取り」「デザイン性」などなど多くの性能の集合体によって建築されます。
いろいろな性能はあとから変えられるものもあれば、あとから足りなかったからと変更することが困難な部分があります。
皆さんは、あとから変更するというのが困難な性能の代表格である耐震性の基準「耐震等級」をご存じでしょうか?
家の強さの基準耐震等級について解説したいと思います。
人生の中で家づくりを何度もされる方は稀で、
多くの人は人生に一度の一大イベントです。
誰もが自分の家は、強く、長持ちし、そして心地よい空間、カッコイイデザインの家であることを望まれています。
今回は、地震対策の基準である耐震等級について解説したいと思います。
家のコンクリート基礎、木の骨組みは、真に家の基礎でありその強度により家の耐震性を大きく左右するものです。
しかし、その大部分は家を建築する中で床の下であったり、壁の中に隠蔽されてしまい、そのやり直しにはかなりの費用がかかります。
また、古い家などはその構造であったり基礎の仕様を不明確なことも多く補強したからといって計算通りの性能がでないこともあります。
あとから変えることの出来ない性能として「耐震等級」のことは新築時にしっかりと確認しておきましょう。
耐震基準はこれまで大きな災害があるたびに何度も改正されてきました。
2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で国の統一基準として耐震性も3つの耐震等級のランクに分類されるようになりました。
耐震等級1:「数百年に一度発生する地震(東京では震度6強から震度7程度)の地震力に対して倒壊、崩壊せずといった表現」
耐震等級2:耐震等級1×1.25倍の強さで長期優良住宅同等レベル。
耐震等級3:耐震等級1×1.5倍の強さで現法では最高等級。
もちろん、耐震等級1で建築基準法に準じたものとなりますので確認申請上問題ありません。
この耐震等級は、住まい手が建物の耐震性能をわかりやすくするためにつくられたランクですが義務ではないために現在でも耐震等級1の住宅が多く建築されています。
最近毎年のように大きな災害が多く日本列島、自分たちの家がどのような耐震性能をもっているのかを最低限確認しておきましょう。
木造住宅の場合、構造計算は「壁量計算」と呼ばれる簡易な計算で計算する方法が主流です。
しかし、耐震等級の高い2、3を確保しようとすると壁量計算といった簡易計算でも可能な場合もありますが一般的には「許容応力度計算」にかけ、柱、梁一本一本について詳細に計算すること必要がでてきます。
ざっくりしたXY方向の壁の強さ、量ではかる「壁量計算」
柱、梁一本一本の強さを入力して計算する「許容応力度計算」
計算用紙10枚程度ですむ「壁量計算」と計算用紙は2~3cmの厚みのある「許容応力度計算」は作業手間も大きく違い、それにともなってコストも違います。
また、詳細に検討する「許容応力度計算」は設計の自由度が高く難しい要望、構造の家に対応できるというメリットもあります。
自分の家が、どのランクの「耐震等級」でどの「計算方法」で計算されているのかは確認しておいたほうがいいでしょう。
「耐震構造」は、建物自体を固めて地震に耐える構造のことを言います。
木造住宅では、先般説明したように3つのランクの「耐震等級」でその強さが分けられています。
「制振構造」は、建物の構造体の中にゴムや油圧のダンパーを取付地震の揺れの力を吸収し、建物へのダメージを軽減する構造です。
「免振構造」は、建物の基礎もしくは基礎下などに免振システムを取付、建物全体で地震力を吸収する構造のことを言います。
導入コストで比較すると
「免振」>「制振」>「耐震」となります。
免振構造は建物全体で地震力を軽減する工法となりますので高い効果が期待できます。
しかし、大型のマンションなどではよく採用されている工法ですが、戸建て住宅で採用を考える場合莫大な費用がかかりなかなか採用とはなりません。
最近では「簡易版の免振」×「制振」といった工法も見られるようになり少し採用がしやすくなってきました。
3つの性能の検討例として、
基本的な性能として「耐震」を高め、
いざという時のために「制振」を検討する。
それでも不足を感じるようなら簡易版の「免振」を検討といった感じで良いと思います。
地震に強い家を希望し、耐震等級3を確保するように設計を依頼したとしましょう。
簡易計算の壁量計算ではなく、「許容応力度計算」をかけ耐震等級3を確保できた家を計画出来ました。
しかし、それだけでは耐震等級3を確保した家だと証明することは出来ません。
証明するためには公的な証明を取る必要があります。
証明には、「住宅性能評価書」「長期優良申請」などの申請が必要になります。
もちろん申請には相応の費用が別途必要になりますので申請費用以上のメリットが出る場合ば検討されてみてはどうでしょうか?
【参考】:「①長期優良住宅のメリット、デメリットの解説」
【参考】:「②長期優良住宅のメリット、デメリットの解説」
耐震等級を証明する大きなメリットが「地震保険」の保険料が割引や「住宅ローン」が優遇されることです。
20年、30年といった長期間で考えた時に大きな金銭的なメリットになりますが、証明にも費用が必要ですのでどりらが得かを計算してみましょう。
次に、不動産として対外的に「耐震等級」をとっている証明となり、不動産価値を高める証明書となります。
将来的に売買する可能がある場合などでは何かしらの証明をとってもいいのではないしょうか?
特に家の耐震性は、建築した後に補強することは、大変な労力とコストをかえないと補強するとはできませんし、新築時に行うような耐震性を出すことは非常に難しい箇所と言えます。
防災科学技術研究所の兵庫県耐震工学研究センターで実施された
木造3階建て住宅を試験体とした実大振動実験で「長期優良住宅」
必須性能である耐震等級2の建物が、震度6強で倒壊したという実験結果がありました。
その結果により、簡単な形状の建物ならまだしも、開放感の大きい建物や、
形状が複雑であったりすると簡易な壁量計算では100%安全といいきることができません。
いざという時の備えで家の根本の性能である「耐震性」ですが、
家の打合せの中では基本性能として少し話が出てくるだけで、意匠や使い勝手に関係のない「耐震性」はプロにお任せという方も多いかと思います。
しかし、自分自身の家の後から変えることのできない大事な基本性能の一つです。
「耐震性」を測る基準として「耐震等級」を覚えておきましょう!
【参考】
・木造住宅の強さを決める3つの検査を知っていますか?
・地震に強い家をつくるためには
※2016年11月14日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他部分も修正して2020年2月17日に再公開しました。
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